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  • 2020.3.2(Mon)

    2/28開催 " 好きな人の好きな人 - 潤年- " ライブレポート&セットリスト公開!



    閏年のちょっと得した+α一日の前の日。戒厳令のようなニュースが告げられたばかりの日本、渋谷の夜は少しだけ人との距離が開いているような気はしたが、日々変わりゆく永劫工事都市・渋谷で、今や都市の日常を映し出すのに欠かせない、コスモポリタンな人々が変わらず行き来していた。

    ヒグチアイ自身が音楽的共感のあるゲストを客演として招き、開かれてきた自主企画シリーズ“HIGUCHIAI presents好きな人の好きな人”。同企画の2020年第一回目“閏潤年”。この夜は、同性であり同時代を生きるミュージシャンとしてデビュー前から親交が深く、競演を熱望していたNakamuraEmiを迎えて行われた。観る側も演る側もスタッフも、デリケートにならざるを得ない状況と空間を気遣いながらも、この場所に居るのが楽しくて仕方ないといった表情で、1曲目の「Rebirth」から、小さな躰を揺らし、嬉々として速射砲のようにライムし、歌い踊るNakamuraEmi。ヒグチアイと同時代を生きる表現者同士のシンパシーを語りながら、自身の成り立ちをこの夜集まったオーディエンスに7曲目「メジャーデビュー」で告げる。ギター(カワムラヒロシ)と期せずして「ピンクの出で立ちが被ってしまった」ことを恥ずかしげに語り、場を和ませながら、ラストの「YAMABIKO」まで緩急つけたソリッドな演奏を伴い、空間を彼女の場所に牽引してゆく。最初は遠慮がちな客席との距離が程よく縮まりヒグチアイにバトンを渡した。





    真っ白な服でステージに静かに上がり、白光のピンスポットがヒグチアイをフォーカスし照らす。ゆっくりと言葉が紡ぎ出され歌になってゆく。徐々にベース(山崎英明)、ドラム(柏倉隆史)だけの無駄のない3ピースサウンドが立ち上がり、そしていつも通りに音楽が鳴らされてゆく。

    彼女の歌は自己否定しながらも、そのことを後ろ向きに捉えるのでなく、開き直りにも似た自己肯定賛歌だ。自身を偽ることなく、誠実に表現し続けるスタイルは、デビュー時からのヒグチアイの個性でもある。心情表現は控えめに、誰もがきっと目にしているであろう、街の風景と事象と登場人物を詩の中に置きながらストーリーテリングしてゆく。オープニング曲「わたしはわたしのためのわたしでありたい」2曲目「わたしのしあわせ」は、自己肯定の強い意思を感じるナンバーであり、この2曲でスタートさせたところに、この夜に歌うことの意味を宣誓しているかのようだ。第三者の視点が多いゆえ、聞く側を突き放していると思われがちだが、ソングライターとしての視点を鋭く磨いているので、実は聞く側に程よい距離で寄り添っているのだ。やや緊張感のある空気を解いたのは「今日のドレスコードはマスクなのかな?」という、ステージ側からの風景をヒグチアイが口にしたところで、客席側の顔とムードが弛緩し、「この場所だけは絶対解放区」といった客席とヒグチアイとの信頼関係が堅く結ばれたような気がした。

    5曲目に昨年11月のワンマンライブ直前に書き上げたという、新曲「東京にて」が披露された。日々アップデートされてゆく「東京」に居る人々を俯瞰した目線で描きながらも、同時代に東京に暮らす、ヒグチアイ自身を等身大で潜り込ませ、私たちに自分の歌として作用させるものとして届ける。

    冗長にならないM Cでは、現在本人編集のブックレットを準備している中で、「25歳O Lときどき風俗嬢」など、異なる世界の人々と取材を通して交歓していること、自身のこととして「30を超えた女性の寂しさ」なども臆面もなく語る。どうやらその好奇心旺盛なジャーナリスト感覚が、先に述べた歌の視点の源泉なのだろう。

    6曲目「備忘録」では、ヒグチアイのナンバーの中で、より景色が見えやすい傷ついた者たちのヒリヒリした歌が、激しくも優しく弾き語られる。本当は思っているけど、口に出せない想いを紡いだ、どこか懐かしいメロディラインが昇華されてゆく7曲目「走馬灯」へと続き、この夜の物語は加速する。それと共にバンドサウンドもクールを装いつつ一体化した熱を帯び出した。現在までの代表曲のひとつ8曲目「前線」「永遠」でヒグチアイとバンドの一体感がピークを迎える。
     本編ラストの「聞いてる」では、一転静謐に丁寧にこの夜の物語がどこにたどり着こうとしているのかを指し示してくれた。













    客席が待ちわびたアンコールでは、NakamuraEmiのデビューアルバムに収められている「女子達」が、ヒグチアイのバンドメンバー(山崎英明、柏倉隆史)、カワムラヒロシを迎え入れ、五人でのセッション曲として選ばれた。ヒグチアイからのNakamuraEmiへのリスペクトがありながらも、軽やかに叩き出されるビートラインの上で、NakamuraEmiと相互に歌われる1曲は、主役二人の歌や生き方に関するシンクロニシティが見て取れる、とても鮮やかに音楽が重なり合った瞬間だった。







    ▶ Report : 東 雄一朗
    ▶ Photo : 藤井 拓

    ▶ SET LIST

    NakamuraEmi
    01. Rebirth
    02. BEST
    03. 東京タワー
    04. スケボーマン
    05. ふふ
    06. ちっとも知らなかった
    07. メジャーデビュー
    08. YAMABIKO

    Gt. カワムラヒロシ

    ヒグチアイ
    01. わたしはわたしのためのわたしでありたい
    02. わたしのしあわせ
    03. 風と影
    04. 玉ねぎ
    05. 東京にて(新曲)
    06. 備忘録
    07. 走馬灯
    08. 前線
    09. 永遠
    10. 聞いてる

    Dr. 柏倉隆史
    Ba. 山崎英明

    アンコール
    女子達(NakamuraEmiカバー/セッション)


    ▶ 今初夏ベスト盤発売&6月フルバンド編成ツアー開催決定!


    HIGUCHIAI
    band one-man “BEST” tour

    2020/6/19(金) 大阪 梅田Shangri-La
    2020/6/21(日) 東京 Veats Shibuya
    2020/6/28(日) 長野 Live House J

    ▶ オフィシャル先着先行 3/9(月)23:59迄受付中!!
    https://eplus.jp/higuchiai2020/